病気で死なない社会が来る?

iPS細胞が完全に実用化された将来、病気で死なない社会が来ると言われています。本当にそんな社会が訪れるのでしょうか?
iPS細胞によって病気で死ぬことが無くなることについて、完全実用化が果たされれば、悪くなった臓器や体内細胞については、すべて培養した細胞で代用することができるようになります。そのため臓器移植の問題も解決し、また従来の医療では治療することのできなかったものについても行うことが可能になります。また死滅した細胞を入れ替えることで身体を再生することができるのです。
iPS細胞にはまだまだ問題点もあり、再生医療そのものがすべての人へ提供できるようになるためには相当な時間がかかると考えられています。しかし医療分野においては正に奇跡とも言える光明であることは間違いではありません。また今まで解決できなかった医療的な問題だけではなく、難病すらも人為的な治療を持って乗り越えることが可能になるかもしれません。今後もiPS細胞の動向について注目していくようにしましょう。

日本がリードするiPS細胞実用化

iPS細胞の実用化については日本がリードしているという現状があります。世界で作製に成功したのが山中教授の研究ということもあり、国内外から再生医療への注目も高まっています。
2006年に山中教授がマウスでiPS細胞の作製に成功しました。病気やけがで損傷した組織を復元する再生医療の切り札として高く注目され、6年後である2012年にはノーベル生理学、医学賞を受賞する運びとなりました。その後の研究についても予想以上のペースで進展しています、そのため開発からわずか8年後の2014年には実際の患者への移植も実現しました。
文部科学省の工程表から、iPS細胞の臨床研究は2016年に心不全、2017年には脊髄損傷やパーキンソン病でも開始する見込みになっています。日本は今後10年間で1,000億円を超える予算を投じ支援する姿勢を見せており、その背景には再生医療が1兆円を超える市場になることが期待されています。

再生医療で活躍するiPS細胞

再生医療においてiPS細胞というものは概念すらも揺り動かしてしまうくらい大きなものになっています。従来の再生医療においては細胞レベルの範囲内で修復し、また機能回復を促すといった範囲にとどまっていましたが、人の臓器を生み出すといった無限の可能性を秘めている分野へと変貌しています。
横浜市立大学の臓器再生医学の研究チームによって、iPS細胞から肝細胞ではなく肝臓を作り出すこといったコンセプトに基づいたヒト臓器の創造といった大きな成果を見せています。臓器を創りだすための原基を作製し、それを患者へ提供するということで従来であれば臓器移植を待つだけだった患者へのより質の高い治療を迅速に行うことが可能になります。またこの移植に変わる新しい再生医療に関しても、2019年に臨床応用がスタートされる見通しとなっており、今後も加速度的に再生医療が進歩していくことが期待されています。
拒絶反応や感染症など問題が残る臓器移植に取って代わるだけではなく難病についての取り組みにおいてもiPS細胞の活躍が期待されています。

ノーベル賞にも輝いた奇跡の発見

iPS細胞についてノーベル賞にも輝いた奇跡の発見と言われており、治療実績が重んじられる医学研究の中でも作製から6年という短期間で賞に輝くという面からも大きく期待されていることが伺えます。2012年のノーベル生理学、医学賞をiPS細胞を初めて作製した京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長と、ジョン・ガードン英ケンブリッジ大名誉教授の2人に贈ると発表されました。生物のあらゆる細胞に成長・転用でき再生医療の実現につながることが高く評価された結果になっています。またノーベル賞の授賞理由については、カロリンスカ研究所は声明において「細胞や器官の進化に関する我々の理解に革命を起こした」と説明しています。
実際に山中伸弥iPS細胞研究所長がiPS細胞の作製について報告したことによってiPS細胞研究への参入が増加、再生医療について研究の競争が激化しています。この事からも世界中から注目されていることや、今後の再生医療において奇跡となる存在であったことが伺えます。

10年後の未来を想像する

iPS細胞と10年後の未来を想像してみると、色々なことが見えてくるでしょう。
ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥教授によると2020年をめどの臨床応用を目標にしています。臨床応用とは、臨床試験で得られた成果や結果を生かし実際の診療に応用することになります。つまりiPS細胞を難病などで悩んでいる患者などに限定的に利用することになります。2020年までに臨床応用されるものについては、臨床研究ペースの早い網膜疾患などが先行しています。特に失明にまで進行する恐れがある加齢黄斑変性については、理化学研究所によって臨床試験が始まっており、早期で治療に使用できるようになる可能性も高まっています。またiPS細胞には癌化しやすいという問題点があるが、加齢黄斑変性については移植後のがん化を回避しやすいことも特徴となっています。
脊椎損傷については、山中伸弥教授が脊椎が傷ついた小型の猿とマウスにiPS細胞から作った神経の元になる細胞を移植手術を行い、治療効果があったことを報告しています。これにより脊椎損傷に関しても、臨床研究が進んでいます。10年後ではどの程度の進捗になっているかの見通しは立っていないが本格的な治療への第一歩となっています。
iPS細胞の臨床研究は加速度的に進んでいくと共に、癌化問題などについては従来以上に慎重な検討が求められています。それに合わせて患者の皮膚などから培養し細胞を作るメカニズムについても基礎研究を強化される見通しになっています。

iPSにまつわる取り組み

iPS細胞にまつわる取り組みについて、細胞組織の報告があがり存在が広まるようになってから研究が進み様々な取り組みがなされています。誕生から約9年近い期間が経ち、実際の人間からの細胞を使ってiPS細胞作成に成功したことや、肝臓などのヒト臓器を作るための実験への成功や、インスリン分泌器官など特定の機能を持つ体内の器官を作成することに成功、加齢黄斑変性症については臨床研究にまで進んでいることなど、大きな進展が見られています。
また現在の取り組みについて、大きな進展が見られていることから新しい目標も掲げられています。まず基盤技術の確立と知的財産の確保です。基本的な特許を取得することです。次に、 医療用iPS細胞ストックの構築です。臓器移植などにおいて、ヒト臓器を培養している時間などが持つことが出来ないことを見通してある程度の型に合わせたストックを作ることになります。そして、前臨床試験から臨床試験への信徒店についても掲げられています。加齢黄斑変性などについては臨床研究がはじまっています。最後に、患者さん由来のiPS細胞を用いた治療薬開発への貢献について、動物実験を用いて既存薬の効果が確認されたことが報告にあがっています。こうした既存薬の応用についても今後更に研究が深まっていくことが考えられています。
また多くのベンチャー企業がiPS細胞から作成した体細胞を製品化しており、今後も更なる成長産業としてなっていくことに注目されています。

iPS細胞の可能性とは?

iPS細胞の実用化に向けた動きが進んでいることを受けて、それに対する報道加熱したことにより多くな注目を浴びています。近い将来実用化が進むと、医療の分野などでも大きな進化が期待することができます。こうしたiPS細胞の可能性について知っておくことは良いことでしょう。
まずiPS細胞は人間の臓器の細胞になり変わることが可能になるかもしれません。人間の臓器などは、現状ダメージが与えられると回復治療を行う他、臓器を移植するなどの手術を行うことが多いです。臓器に問題があった場合は、臓器を提供してくれる方を待つ以外に方法が無いという方が居ます。そういった方達は、病状の長期化が避けられないことや、移植を受けたとしても拒否反応に苦しむなどといった問題が有りました。iPS細胞は臓器の細胞になることや、臓器そのものを作ることができる可能性を秘めているので、将来的には迅速な手術や移植が行えるようになるかもしれません。
またiPS細胞は、人間のどんな細胞でも作り出すことが可能になります。そのため精子や卵子といった、生命に関する問題も解決できるケースが生まれます。不妊に悩んでいる方や無精子などの場合、iPS細胞で生命の誕生を行うことも可能になるかもしれません。また人間の中枢神経や目の網膜などにも転用することができ、今まで内側から治すことができなかった分野も今後は再生医療が期待できます。
このように多くの可能性を秘めているiPS細胞には今後も多くの方が注目していくことになるでしょう。

そもそもiPS細胞って?

iPS細胞について、正式名称はnduced pluripotent stem cellであり、人工多能性幹細胞と呼ばれています。自分の皮膚や髪の毛の細胞から抽出して培養し、身体の組織や臓器などの細胞へ分化させることを目的としています。iPS細胞は、万能細胞とも呼ばれており、特に医療の分野から高い注目を浴びています。同じ研究については既存でES細胞というものがありましたが、こちらと比べても身体に対する拒否反応がでにくいことや、倫理的観点からも問題がないことから今後更に研究が進むものだとされています。
ES細胞というものは人間の受精卵から細胞を取り出し、人間の組織や細胞へ転用するというものです。人間の受精卵ですから、そのまま母体の中にいることで赤ちゃんが生まれます。つまり赤ちゃんを成長前に取り出し細胞だけを取る行為に準ずると考えられており、どうしても倫理上の観点から許されないという意見があることや、他人の細胞を使うためある程度の拒否反応が出ることが考えられています。
こうした部分ではiPS細胞は自分の皮膚などの細胞組織を使うためある程度クリアになっています。しかし理論上ではiPS細胞が実用化できれば、皮膚などから精子や卵子を作ることも可能になってしまうため新しい倫理問題が生まれることも考えられています。またiPS細胞の癌化問題があり、解決方向には向かっていますが、こちらも実用化の上で問題になることが予想されます。